土屋 正孝先生(四代目校長)
『コツコツ』と歩む 〜卒業生から贈られた色紙〜

 今年の夏は猛暑が続き、真夏日が連続40日という観測史上最長記録となりました。最近、地球上の気象が異常をきたしているように思います。昨年の夏は冷夏でありましたが、ヨーロッパでは猛暑が続き死者が多数出たと報道されていました。今年のわが国の天候は8月半ばで既に台風が5つも襲来し、熱波と洪水に見まわれ、自然の猛威に曝されています。このような異常気象も人間の過度の開発による結果が影響していると思われます。

 その一方でわが国では予想することもできない凶悪な事件が起こっています。文明の進歩に伴って、生活が豊かになり便利になると言う『光』の面と、その反面で一部の人々の心や行動が正常にはたらかず道徳心や公共心を失って様々な事件を引き起こしてしまうという『陰』の部分が見られます。

 しかし、そのような悲観的な面だけではありません。平成14年には田中耕一さんが若干43歳の若さでノーベル化学賞を受賞しました。

 又、この夏、108年ぶりに近代五輪発祥の地への里帰りとなった第28回オリンピック競技会アテネ大会で体操、柔道、水泳、女子マラソンなどでわが国の若人が大活躍をしました。

 田中さんは「『コツコツ』が口癖で、地道に進むのが自分のスタンスだ」と言い、「裏方の役回りが好き」と言っています。最近の若い人の中には目立ちたがりやが多いように思いますが、大変に控えめで謙虚に感じました。オリンピック・水泳で二冠を達した北村康介選手もコツコツ努力するタイプであると聞いています。

 最近では一発当てて成功するという行き方がもてはやされますが、コツコツ積み重ねて努力した方が成功しなくても着実に自分の身に着き、成功への道につながると思います。

 私はこのような急激に変化する世の中で人間としての尊厳を失わず矜持と品格をもって生きて欲しいと願っています。

 私の手元に卒業生が贈ってくれた一枚の色紙があります。この色紙に記されている皆さんの生き方・感性は派手ではないが地味にコツコツと生きていこうという姿勢がうかがわれます。又、地道な教育活動を展開している本校の教育活動で身に付けた品性と矜持を感ずることもできます。私の自宅の机上にはこの色紙が掲げてあり、彼らのまじめに生きていこうとする姿勢が私に勇気と希望を与えてくれます。この色紙に見られる卒業生の意識は本校の教育目標である『叡知・敬愛・剛健・自律』を常日頃から生活の中で地道に活かしていることの証であると強く感じています。

 卒業生の皆様が健康で明るく自己の信じる道をコツコツと歩んで欲しいと願っています。